全日本フィギュアフルデータまとめ ~データが物語る、女子の回転不足の多さ~
こんばんは、そしてあけましておめでとうございます。
ch191です。
昨年はぽっと出だったにもかかわらず、たくさんの方に見ていただき、ありがとうございました。
今年は少しでも内容、レイアウトを改善できればと思っておりますので、まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いします。
さて、年末年始は体調を崩してしまいまして、書ける状態ではなかったので、こんなタイミングになってしまいました。
今さらですが、全日本フィギュアをデータでまとめたいと思います。
まずは男子シングルから。
SP上位10人の点数を、詳しく見ていきたいと思います。(カッコ内はTES,基礎点+GOE,PCS,SS/TR/PE/CH/IN,減点)
羽生 94.36(48.76,39.38+9.38, 45.60,9.20/8.80/9.25/9.15/9.20,-0.00)
町田 90.16(48.16,40.70+7.46, 42.00,8.25/8.15/8.60/8.55/8.45,-0.00)
宇野 85.53(48.68,42.74+5.94, 36.85,7.50/7.05/7.45/7.40/7.45,-0.00)
村上 81.28(43.53,38.33+5.20, 37.75,7.65/7.25/7.70/7.60/7.55,-0.00)
無良 78.54(41.19,40.41+0.78, 38.35,7.85/7.50/7.60/7.80/7.60,-1.00)
小塚 72.39(32.54,31.30+1.24, 40.85,8.35/8.15/7.90/8.25/8.20,-1.00)
山本 67.19(35.74,30.64+5.10, 31.45,6.75/6.00/6.25/6.30/6.15,-0.00)
佐藤 66.21(36.26,35.90+0.36, 29.95,5.80/5.55/6.15/6.30/6.15,-0.00)
田中 62.83(29.28,27.90+1.38, 33.55,6.85/6.45/6.55/6.90/6.80,-0.00)
日野 61.23(33.53,37.31-3.78, 29.70,6.35/5.70/5.85/6.10/5.70,-2.00)
基礎点は宇野がトップでした。
スピン・ステップでは唯一全てレベル4を獲得するなど、高い評価を受けました。
3Aの着氷ミス(GOE-0.60)がなければ、TES50点台の可能性もありました。
しかし、PCSが全て7点台中盤に留まり、羽生や町田に水を空けられてしまいました。
羽生の基礎点が低かったのは、3Lz+3T(11.11x)が3Lz+2T(8.03x)になったことで基礎点が3.08下がり、さらにスピン・ステップが全てレベル3に留まったことが原因です。
しかし4Tと3AでGOE+3.00という最高評価をもらうなど、GOE加点で稼ぎ、TES首位となったのです。
さらにPCSも4項目で9点台をマークするなど、盤石の戦いぶりです。
町田はスピンやステップがレベル2や3に留まって基礎点が若干伸びなかったものの、GOEは全てプラス評価で、羽生に次ぐ加点をマークしました。
PCSも彼本来の点数ではありませんが、羽生に次ぐ2番目の好スコアで90点を越えてきました。
村上はGOEは全てプラス評価でしたが、加点幅がやや小さく、NHK杯から大きく得点を伸ばすことはできませんでした。
PCSもNHK杯から少し上がった程度で、もう少し上乗せしたかったところ。
無良は4Tでの転倒が響き、その他の要素でも3A(+2.00)以外では大きな加点が得られず、TESは伸びませんでした。
さらにNHK杯では4項目で8点台をマークしたPCSも全て7点台にとどまりました。
小塚は冒頭の4Tが4T«(基礎点4.10)の判定で転倒、3Lz+3Tも3Lz単独判定となるなど、TESが全く伸びませんでした。
しかし、それだけミスがあったにもかかわらず、PCSは羽生、町田に次ぐ3番目のハイスコアで6位にとどまりました。
山本は冒頭の3Aが2A«(基礎点1.10)となる大きなミスがあったにもかかわらず、他の要素でGOEを大きく稼ぎました。
PCSはまだまだこれからといった感じですかね。
ということで、PCS評価も昨年に比べると辛目な印象でした。
宇野は今後国際舞台を経験し、PCS評価が上がってくれば、十分戦えるレベルであることをSPで既に証明してくれました。
羽生は…さすがです。
3Lz+2TになったジャンプもGOE-0.42で抑えてますからね。(+1を付けたジャッジもいたぐらい)
とっさに2Tにした上、腕を上げて飛ぶという機転。
羽生が本当に強い理由はこういうところかもしれません。
1つミスしてもすぐに取り戻せる「リカバリー力」。
怪我からの「リカバリー力」もすさまじい。
今後、羽生のキーワードになっていくかもしれません。
町田は本当にいい演技を見せてくれました。
まさかこれが最後のSPになるとは。。。
ではFSも詳しく見ていきましょう。(1つ目のカッコ内はFS得点)(2つ目のカッコ内はTES,基礎点+GOE,PCS,SS/TR/PE/CH/IN,減点)
羽生 286.86(192.50)(101.90,90.12+11.78, 91.60,9.20/8.85/9.25/9.25/9.25,-1.00)
宇野 251.28(165.75)( 87.55,79.37+ 8.18, 78.20,7.70/7.60/7.95/7.90/7.95,-0.00)
小塚 245.68(173.29)( 84.29,78.63+ 5.66, 89.00,9.10/8.85/8.90/8.95/8.70,-0.00)
町田 242.61(152.45)( 66.55,61.95+ 3.60, 86.90,8.65/8.45/8.60/8.90/8.85,-1.00)
無良 236.40(157.86)( 81.06,76.72+ 4.34, 76.80,7.95/7.45/7.60/7.85/7.55,-0.00)
山本 206.80(139.61)( 74.81,68.27+ 6.54, 65.80,6.95/6.15/6.95/6.50/6.35,-1.00)
村上 202.08(120.80)( 51.00,55.54- 4.54, 71.80,7.55/7.10/6.95/7.20/7.10,-2.00)
田中 187.43(124.60)( 57.20,54.32+ 2.88, 68.40,7.00/6.45/6.55/7.15/7.05,-1.00)
日野 181.33(120.10)( 60.60,65.70- 5.10, 61.50,6.55/5.90/6.10/6.25/5.95,-2.00)
佐藤 174.42(108.21)( 50.21,55.91- 5.70, 60.00,6.00/5.80/5.90/6.15/6.15,-2.00)
羽生のTESが際立ちます。
冒頭4Sで転倒(GOE-3.00)がありながらトータルでGOE+11.78ですから、基礎点の高さと合わせるとまさに異次元です。
何より、SPでミスがあった3Lzを2回ともクリーンに決めたことがすごい。(しかも3Lz+2TはGOE+3を含む高評価)
SPで一つもレベル4が取れなかったスピン・ステップも1つを除いて全てレベル4を獲得するなど、ジャンプ以外でも稼ぎました。
PCSもSPに続いて4項目で9点台をマーク。
他を寄せ付けませんでした。
腹痛を抱えていてあの演技ですから、彼は本当にバケモノなんでしょうか?
世界選手権も万全の状態で迎えることは難しそうですが、それでも勝ってしまうのが彼のすごいところ。
何よりあの「リカバリー力」があれば、戦えるレベルまで戻すのはそう難しいことではないのかもしれません。
宇野は最後の3F+3T<の着氷ミスさえなければTES90点台に乗る可能性もあったというハイスコア。
最終グループ1番滑走で本当にいい演技をしました。
スピンで2つレベル3になる部分はありましたが、GOE合計+8.18は羽生に次ぐ2番目。
さらにPCSもSPから大きく伸ばし、8点近い点数を揃えました。
四大陸選手権でも、世界ジュニアでも表彰台の真ん中を狙ってほしいですね。
小塚は4Tを2本、さらに後半に3A+2T+2Lo、3Lz+3Tのコンビネーションを持ってくるなど攻めのプログラムで、FS2位で見事逆転の表彰台にのぼりました。
4Tはともに回転不足と判定され、中盤にも着氷の乱れ等があり、構成ほどTESは伸びませんでしたが、ステップで最高評価GOE+2.10(今までに見た事ありません!)を叩き出すなど持ち味であるスケーティング技術の高さを見せました。
その証拠に、PCSは89.00という高得点、特にSSは9.10と9点台をマークしました。
小塚のこれほどまでに良い演技を見れたのは久しぶりで、今大会のハイライトでしょう。
高橋、織田の引退で最年長となった小塚ですが、まだまだ健在です。
ジャンプを修正できれば、世界選手権4年ぶりの表彰台も夢ではありません。
町田は4Tでの転倒(しかも繰り返しにより基礎点70%)、3A+3Tが2A+2Tになるなど、コンビネーションが1つしか入らず、TESが伸びませんでした。
また、スピンでもレベル1やレベル2が出たり、V1(基礎点70%)がついたりと、ジャンプ以外の要素でも得点を伸ばせませんでした。
それでもPCSでは羽生、小塚に次ぐ3番目の得点。
INでは小塚を上回る8.85をマークするなど、第九を最後まで演じ切りました。
そしてこれが最後の第九になるとはだれも想像していませんでした。
彼の中では前々から確固たる想いがあったのでしょう。
たくさんの感動をありがとう、そしてお疲れ様でした。
これからはこの競技経験を生かして、フィギュアスケート発展に貢献してもらいたいですね。
無良はやはり4Tが1本決まりませんでした。
さらにGPファイナルでもミスのあった3Loがステップアウト、3Fは3F«となってしまいました。(そしてやっぱりエッジエラー)
世界選手権で上位争いをするには特に3Fのエッジは絶対に直さないといけないでしょう。
スピンも一つレベル2になるなど、ジャンプ以外でも取りこぼしがありました。
それでも冒頭の4Tがコンビネーションにならなかったので、2本目を4T+3Tに変えてくるなど、「リカバリー力」は昨シーズンに比べても上がったと言っていいでしょう。
大崩れしなくなった、というのがある意味今シーズン一番の収穫かもしれません。
PCSもまだまだ改善の余地ありです。(なにせSPで勝っていた宇野に負けています)
町田の辞退によるとはいえ、めぐってきた世界選手権出場のチャンス。
得意のジャンプを決めて、上位進出を狙ってほしいですね。
山本は冒頭の3Aで転倒があり、最後の2Aにもミスはありましたが、それ以外はすばらしい演技で、見事に6位入賞を果たしました。
ジャンプの質の高さが際立ちました。
特に3Lzと3Fは2回ずつ飛んで、全てエッジエラーなし。
ここまでLzとFを完璧に飛び分けられる選手もなかなかいないと思います。
GOE合計は3Aの-3.00、2Aの-1.30がありながら堂々の+6.54。
ここに4回転が加わると、本当に世界で戦えるレベルです。
世界ジュニアではまた宇野とのワンツーが期待できます。
まだ14歳、3年後に代表争いをしている姿が目に浮かびます。
村上は得意の4Sが2回とも4S<となり転倒、2本目は繰り返しによりさらに基礎点が70%になってしまいました。
さらに3Aは1本目が1Aに、2本目は3A<となり両足着氷。
序盤の得点源となるジャンプが全て決まらず、TESに大きく響きました。
さらに、PCSもNHK杯の時から8点以上も下がってしまうなど、FSは8位に沈みました。
やはり最終滑走のプレッシャー、長く待たされたことによって、いつもよりもスピード感に欠けていたような感じがしました。
しかし、これも今後の糧にして、四大陸選手権ではクリーンな4Sをまた見たいですね。
ということで、羽生の強さが際立ちました。
ミスがあってもこの加点がもらえるということは、もはや誰にも届かない領域と言っていいでしょう。
夢の300点は来シーズンに持ち越しとなりそうですが、その方が楽しみが増えていいかもしれません。
まずは世界選手権に向けて体調を整えること、これが今の彼の最大の課題です。
宇野はやってくれましたね。
3Aより4Tの方が安定しています(笑)
今後、4Sをプログラムに取り入れてくる可能性もありますし、国際舞台を経験して、まずはPCSを上げることが課題ですかね。
小塚は見事に全日本に照準を合わせてきました。
もちろんまだ不完全ですが、ミスがあったことを感じさせないあの演技はまさに圧巻でした。
やはり羽生とともに日本を引っ張っていってほしい存在です。
そして、町田が引退しました。
もちろん彼としてはFSは不本意な出来だったでしょうが、最後まで「魅せる」ことを意識していたことが伝わってきました。
最後の3Lzは「第九を演じられるのは俺しかいない」という彼の矜持を見た気がしました。
これが最後の演技になるのは残念な気もしますが、今後の彼の人生が素晴らしいものになることを祈ります。
そして、各代表は以下のように。
世界選手権:羽生・小塚・無良(町田辞退により繰り上げ)
四大陸選手権:宇野・無良・村上
世界ジュニア:宇野・山本・佐藤
思いっきり予想が外れて恥ずかしい限りです。
全ての大会で表彰台の中央が狙えるメンバーが揃った感じがします。
来年も、日本男子が世界を席巻することを期待しましょう。
続いて女子シングル。
まずSP上位10人の点数を、詳しく見ていきたいと思います。(カッコ内はTES,基礎点+GOE,PCS,SS/TR/PE/CH/IN,減点)
本郷 66.60(36.82,30.36+6.46, 29.88,7.50/7.20/7.65/7.50/7.50,-0.00)
宮原 64.48(34.48,29.96+4.52, 30.00,7.35/7.30/7.65/7.55/7.65,-0.00)
樋口 64.35(36.07,30.83+5.24, 28.28,7.30/6.65/7.35/6.95/7.10,-0.00)
中塩 60.07(34.35,28.33+6.02, 25.72,6.40/5.95/6.70/6.40/6.70,-0.00)
加藤 58.10(33.14,29.24+3.90, 24.96,6.50/6.05/6.25/6.25/6.15,-0.00)
永井 58.00(31.92,26.50+5.42, 26.08,6.55/6.25/6.60/6.55/6.65,-0.00)
坂本 57.81(35.17,30.73+4.44, 22.64,6.05/5.50/5.90/5.50/5.35,-0.00)
木原 57.57(31.93,27.83+4.10, 25.64,6.40/6.20/6.45/6.40/6.60,-0.00)
村上 57.55(26.95,23.93+3.02, 30.60,7.60/7.35/7.65/7.75/7.90,-0.00)
今井 56.95(29.07,26.41+2.66, 27.88,7.00/6.70/7.05/7.05/7.05,-0.00)
本郷は全ての要素でプラス評価をもらうなど、全選手中トップのGOE加点をもらい、トップのTESをマークしました。
特に冒頭の3T+3Tはジャッジ全員が+2の評価でGOE+1.40という大きな加点をもらいました。
さらに、スピンは全てレベル4を獲得するなど、ジャンプ以外の要素でも得点を伸ばしました。
PCSも7点台中盤を揃え、スケーティング技術の向上を印象付けました。
宮原は3Lz+3Tが3Lz<+3T<(GOE-0.28)となり3Fも!(GOE+0.00)がつくなど、ジャンプでやや点数が伸びませんでした。
それでもスピン・ステップは唯一のオールレベル4。
PCSも村上に次ぐ2番目の得点を叩き出し、好発進です。
樋口は3Lz+3Tが3z+3T<になり、3Fも!がつきましたが、GOEは全てプラス評価。
特に冒頭の2Aは7人中4人が最高評価+3を出す素晴らしい出来でした。
スピンも全てレベル4を獲得し、基礎点だけなら全選手中トップ。
PCSも平均7点を越えてくるなど、初めての全日本で非凡な才能を発揮しました。
中塩は冒頭の3T+3TでGOE+1.40という高評価をもらうなど、本郷に次ぐGOE加点をもらいました。
ジャンプの質が高い証拠です。
PCSを上げていくことが今後の課題でしょうか。
加藤は構成を変えて、全ての要素を決め、5位発進。
スピンが1つレベル2になってしまったのがもったいなかったですが、それでもしっかりとまとめてきました。
PCSをもう少し上げたいところ。
永井は2Aが1Aになってしまい、無効要素となってしまいました。
これだけで4点前後損しているわけですから、もったいなかったです。
それでもこの位置に付けたのは、他の要素の質が高かったからに他なりません。
要素が一つ抜けたにもかかわらず、GOE加点合計は本郷・中塩に次ぐ3番目。
PCSがもう少し上がれば十分シニアでも戦えます。
坂本は3Lzに!こそつきましたが、シニア顔負けの難しい構成を決めてTESは本郷・樋口に次ぐ3番目。
基礎点だけなら2番目です。
PCSは他選手と比べると落ちますが、まだ14歳、これからです。
木原は冒頭の3T+3Tが3T<+3Tになったものの、それ以外の要素を確実に決め、上位と微差の8位と好発進。
安定して力が出せる選手だという印象です。
これからどんどん出てきてほしい選手ですね。
村上は3T+3Tが3T<+3T<(基礎点8.20→6.00、GOE-0.42)に、3Fも3F<(基礎点5.30→3.70、GOE-0.70)となる、この2つのジャンプだけで実に5点近くも点数を落としました。
さらに直後のスピンはレベル1でV1(基礎点70%)となるなど、TESが全く伸びませんでした。
それでもステップはレベル4を獲得し、最高評価+3を2人がつけるなど意地を見せました。
PCSは全選手中トップの点数をマーク。
それだけに、この回転不足の嵐は何とも言えません。
今井も目に見えるミスはありませんでしたが、3S+3Tが3S+3T<となり、他の2つのジャンプも加点が全く得られませんでした。
スピンやステップもレベル2や3にとどまり、TESが伸びませんでした。
それでもPCSは5番目の高評価。
上位との差も大きくはなく、まずまずの出来だったと言えるでしょう。
ということで回転不足が連発した女子SP。
全選手合計で実に37回も回転不足がとられています。(ダウングレードも含む)
これは(個人的な意見ですが)さすがにやりすぎでは、と思います。
厳しくするならするで事前に通達があるべきだと思いますし、ルール上は3/4回転以上回っていればokですからね。
スローで見ても3/4回転以上は回っているというジャンプで回転不足をとるのはいささか疑問です。
3回転なら3回転回ってないと回転不足をとるとでも言わんばかりです。
村上のジャンプも3T+3Tの1本目は怪しいですが、2本目は回り切っているように見えますし、3Fも3/4回転以上は回っているように見えます。
はっきり言ってこれはISU公認の大会より厳しいです。
スピン・ステップのレベル判定も辛かったですね。
ルッツ・フリップ判定もしかり。
国際大会に向けて、ということを考えれば辛くすべきなんでしょうが、その国際大会より辛くするのはいかがなものか。
小塚の言う通り、統一した基準がないと選手が混乱します。
行き過ぎると選手の可能性を潰すことにもなりかねません。
せめて国際大会の基準で見てあげるべきなのでは、と思います。
そんな中でも上位3人は高い得点を出してきました。
やはりそれぞれの要素の質の高さが重要であることを改めて認識させられました。
ではFSも詳しく見ていきましょう。(1つ目のカッコ内はFS得点)(2つ目のカッコ内はTES,基礎点+GOE,PCS,SS/TR/PE/CH/IN,減点)
宮原 195.60(131.12)(66.88,57.42+9.46, 64.24,7.80/7.80/8.05/8.25/8.25,-0.00)
本郷 188.63(121.93)(59.69,53.27+6.42, 62.24,7.60/7.40/8.00/7.85/8.05,-0.00)
樋口 181.82(117.47)(61.79,54.91+6.88, 55.68,7.40/6.65/7.00/6.90/6.85,-0.00)
永井 168.55(110.55)(56.23,49.37+6.86, 54.32,6.95/6.60/6.75/6.85/6.80,-0.00)
村上 168.29(110.74)(48.18,44.82+3.36, 62.56,7.85/7.45/7.80/7.95/8.05,-0.00)
坂本 167.46(109.65)(60.29,54.05+6.24, 49.36,6.45/5.90/6.50/6.10/5.90,-0.00)
加藤 165.53(107.43)(55.43,52.69+2.74, 52.00,6.65/6.30/6.70/6.45/6.40,-0.00)
木原 163.58(106.01)(56.53,51.89+4.64, 50.48,6.35/6.00/6.30/6.45/6.45,-1.00)
三原 158.81(105.58)(59.42,54.58+4.84, 46.16,5.90/5.40/5.80/5.85/5.90,-0.00)
中塩 158.43( 98.36)(49.20,47.42+1.78, 50.16,6.40/6.00/6.25/6.30/6.40,-1.00)
今井 158.03(101.38)(46.92,42.46+4.46, 54.16,6.90/6.45/6.75/6.80/6.95,-0.00)
大庭 156.35(105.14)(53.14,49.22+3.92, 52.00,6.50/6.40/6.65/6.50/6.45,-0.00)
一応大庭まで入れてみました。
宮原は最終滑走で圧巻の演技をみせ、見事な逆転優勝。
しかも判定が厳しいと見るや、SPで回転不足をとられた3Lz+3Tを回避し、3Lz+2T+2Loに変更。
後半に2A+3Tを2回入れるという構成に変更し、見事に回転不足を最小限に抑えました。(結局コンビネーションでは、回転不足は最後が2A<+3Tになっただけ)
単独の3Fが3F<となり!になった以外は全てGOEプラス評価で、合計10点近い加点を得ました。
スピン・ステップもSPに引き続き全てレベル4を獲得。
中でもレイバックスピンはジャッジ5人が最高評価を付けるすばらしい出来でした。
PCSでもトップの点数を叩き出し、文句なしの優勝でした。
このように構成を変えられるのも彼女が人一倍努力しているからに他ならないでしょう。
やはり新世代を引っ張る存在になって行くでしょう。
四大陸選手権、世界選手権でもメダルに期待です。
本郷は最終グループ1番滑走で良い演技を見せ、宮原に逆転を許したものの2位に入りました。
思いのほか得点が伸びなかったのは回転不足を4回もとられてしまい、ジャンプで加点をあまり得られなかったことが原因でしょう。
やはりプレッシャーからか慎重になってしまった部分があったかと思います。
それでも3Lzがエッジエラー判定になった以外は全てGOEプラス評価で、スピンは全てレベル4を獲得しました。
大きな国際舞台を経験し、安定感が増してきているように思います。
その証拠に、PCSは2項目で8点台をマークするなど、徐々に評価を上げてきています。
課題はコンビネーションの最後のジャンプで回転不足をとられないこと、そしてルッツのエッジを直すことですかね。
これらの課題が克服できたとき、自ずと本人の目標である180点台をクリアし、国際大会での上位進出が見えてくるでしょう。
来年の四大陸選手権、世界選手権が楽しみです。
樋口は冒頭の3Lz+3Tがパンクしてしまいましたが、その分後半に3Lz+3Tを持ってくるというシニア顔負けのリカバリーを見せました。(結局3Lzがオーバーターンとなり3Tは3T<になってしまいましたが)
SPでも!がついた3Fはやはり!判定でしたが、それ以外のジャンプでは回転不足をとられることもなく、全て加点を得ました。
特に後半の2A+3Tは3人が最高評価を付けるなど、GOE+1.68という驚異的な加点を得ました。
ステップでもレベル4を獲得するなど、ジャンプ以外の要素でも得点を稼ぎ、加点合計は宮原に次ぐ2番目でした。
PCSはSPに比べるとミスがあった分伸び悩みましたが、それでも4位に大差をつけての堂々の3位表彰台です。
世界ジュニアに向けては、フリップのエッジを直すことができるかどうか、これがカギになる気がします。
ルッツは得意ですから、フリップを正確に飛ぶことができれば、190点近い点数が出ると思います。
そして来シーズンに向けては、3Aの習得に期待しましょう。
永井は、持ち味を存分に発揮して見事な4位入賞です。
冒頭に連続で持ってきた得意の3Lzからのコンビネーション(3Lz+3T、3Lz+2T)は2つとも1点以上の大きな加点を得ました。
特に3Lz+3Tは基礎点、GOE合わせて11.50という驚異的な点数を叩き出しました。(これは全選手の全要素の中で最高得点)
それだけに3Fが1F!になったところと2A+3T+2Tが2A+3T«になってしまったところがもったいなかったですね。(基礎点だけでも9.31点下がってしまいます)
しかし、スピンやステップでも得点を稼ぎ、加点合計は樋口とほぼ変わらない3番目でした。
PCSもSPから大きく上げてきて、6点台後半を揃えました。
この結果、世界ジュニアはもちろん、四大陸選手権の代表にも抜擢されました。
まだ16歳と若く、樋口とともに今後が期待されます。
課題はやはりフリップのエッジですかね。
今でも180点台が十分出せると思いますので、上位進出を狙ってほしいですね。
村上はFS4位と巻き返しましたが、それでも上位3人には大きな差をつけられ、5位に終わりました。
SPに引き続き、FSでも回転不足を4回もとられるなど、TESが伸び悩みました。
問題なのはNHK杯の時と同じようなところでミスをしてしまったところです。
NHK杯で2Loになってしまった3Loは3Lo<判定でステップアウト。
NHK杯で転倒してしまった3Fは1Fに抜けてしまいます。
スピンやステップ、コレオシークエンスは高い評価を得ただけに、ジャンプのミスが目立ちました。(特にコレオは全選手中最高の加点をもらっています)
それでもPCSは8点台1項目を含む高い評価で、宮原に次ぐ2番目の得点をマークしました。
実績を考慮して世界選手権の代表には選ばれましたが、このままでは出るだけになりかねません。
3か月弱時間は残されていますので、いかにジャンプを修正できるかが復活へのカギであることは言うまでもありません。
自分が下の子達を引っ張って行くんだ!というぐらいの強い気持ちを持ってもらいたいところです。
坂本はミスなく滑り切り、見事な6位入賞です。
3Lzがエッジエラー判定になった以外は全てGOEプラス評価。
特に冒頭の3F+3T、2A+3T+2TはともにGOE+1.40という高い評価を受けました。
回転不足も1回しかとられず、TESでは宮原・樋口に次ぐ3番目の得点をマークしました。
PCSも他選手よりは落ちるとはいえ、SPからは大幅に上げてきました。
TESだけならすでにシニアで十分通用するレベルです。
世界ジュニアに向けての課題はルッツジャンプのエッジの矯正と、スピンやステップを磨き、PCSを上げていくことですかね。
まだ14歳、樋口・永井とともに次世代を担う旗手として、今後が期待されます。
加藤は大きなミスなく滑り切りましたが、回転不足を4回取られたことが響き、7位に順位を落としました。
NHK杯でもエッジエラー判定だった3Lzは今回もエッジエラーで回転不足となり、両足着氷になってしまいました。
それでも2本目の3Sは腕を上げて飛び、+1.26という大きな加点をもらい、最後には3Lo+2T+2Loの3連続を決めるなど、随所に持ち味を発揮しました。
PCSもSPから大きく上げてきました。
宮原と同世代の16歳で、2年前の全日本では6位に入るなど、ポテンシャルの高い選手です。
最大の課題はルッツのエッジでしょうが、今後もシニアの舞台で活躍が期待される一人です。
木原は冒頭の3Fが2F!に、3Lzが3Lz<!になり、序盤でつまずきましたが、その後は3Sが3S<になった以外は全てのジャンプをクリーンに決め、昨年と同じ8位に入りました。
しかし、同じ8位でも去年よりスコアは上がっています。
特に後半2回入れた2A+3Tのコンビネーションはそれぞれ+0.98、+1.26という大きな加点をもらっています。
厳しい判定の中、コンビネーションで回転不足をとられなかったのは見事でした。
スピンでも2つレベル4を獲得するなど、ジャンプ以外の要素でも得点を稼ぎました。
PCSはミスが出た分上がりませんでしたが、良い演技だったと思います。
木原も宮原らと同世代。
難病を患い、スケートが全くできない時期を経て、遅咲きながらようやく才能が開花しつつあります。
来シーズン以降に期待です。
三原は序盤のジャンプでミスが出ましたが、しっかりと演技をまとめてSPの13位から9位に順位を上げました。
冒頭の3F+3Tが2Fとなり、3Lzも!判定となりましたが、その後は最後の3Sが3S<になった(これが唯一の回転不足)以外は全てプラス評価をマークしました。
特に単独の予定だった3Fを3F+3Tにしてリカバリー(なんとGOE加点を合わせて11.04!)、さらに前半に持ってくる予定だった2A+3Tを後半に持ってくるなど、攻めたプログラムでTESは5番目となる高いスコア。
PCSもSPから上げてきました。(それでもまだ低いですが)
昨シーズン全日本Jrで2位に入った実力を発揮し、前年の12位を上回ってきました。
まだ15歳ですが、すでにジャンプの完成度はかなり高いです。
今後は表現力を磨き、代表選手を脅かす存在になっていってほしいですね。
中塩はFS12位に沈み、SP4位から10位まで順位を落としてしまいました。
最終グループの緊張からか、最初のポーズを間違えてしまいました。
案の定、冒頭の3Lzは3Lz<eの判定で転倒、続く3Loは2Loになってしまいました。
回転不足を4回もとられてしまい、TESに大きく響きましたが、2A+3T+2T、3S+2Tという2つのコンビネーションはそれぞれ+0.84という高い評価を受けました。
また、コレオシークエンスでも1点を越える大きな加点をもらうなど、随所に持ち味を発揮してくれました。
ミスが出た分PCSはSPより下がってしまいましたが、これも彼女にとってはいい経験になったことでしょう。
全日本の最終グループなんてそうそう経験できるものではないでしょうから。
今後はSPとFSを揃えることが最大の課題になってきそうです。
彼女も18歳と遅咲きの部類ですが、JGPファイナルを経験するなど飛躍の1年になったことは間違いないはずです。
来シーズンは真価が問われることになりそうです。
今井はジャンプに精彩を欠き、SP10位からさらに1つ順位を落としてしまいました。
前半に予定していた2A+3T、3S+2T+2Loがともにコンビネーションにならず、コンビネーションを2つしか飛べませんでした。
こういうのを見ると失敗した後のリカバリー力って大事だなと思います。
逆に、もうベテランの域である今井でもリカバリーしきれないのを見ると、やっぱり難しいんだなぁとも感じます。
回転不足を3回取られたのもいただけませんが、スピンも1つレベル1になってしまうなど、ジャンプ以外の要素でも取りこぼしがありました。
それでもコレオシークエンスは+1.26という大きな加点をもらうなど、きれいに決まった要素は大きな加点をもらえています。
PCSもSPから下がったとはいえ6番目の高評価。
来シーズンは復活を期す勝負のシーズンになりそうです。
大庭は最後が3連続のコンビネーションにならなかったものの、大きなミスなくまとめ、FS10位と巻き返し、SP18位から順位を6つ上げました。
FSでもSPと同じ3回回転不足をとられてはいますが、SPを受けて意識しての結果ですから、改善してきたと言っていいでしょう。
クリーンに決まったジャンプでは大きな加点を得ました。
今年GPシリーズデビューを果たした19歳。
さらに上を狙うには回転不足を取られないようにすることと、プログラムの難易度を上げることが課題でしょうか。
FSでLzなし、F1本では物足りません。
Lzを入れないのであればせめてFは2本入れたいところです。
ということで、さらに回転不足が乱発したFS。
全選手合計でなんとSPの倍以上である79回も回転不足がとられました。(ダウングレードを含む)
前日にSPであれだけの回転不足がとられたことを受けて、選手たちは回転不足を意識して臨んだはず。
その結果これです。
もはや基準が分かりません。
ISUのジャッジが同じ演技を見たらどうでしょうか。
【1/9訂正】ISUの他のジャッジが同じ演技を見たらどうでしょうか。(ご指摘いただいたとおり、今回のテクニカルスペシャリストはISUのジャッジなので訂正させていただきます。)
ここまでの回数にはならないと思います。
SPの二番煎じになるのでこれ以上は書きませんが、いくら何でもやりすぎです。
そんな中、回転不足をとられても130点台を出した宮原のFSは圧巻でした。
圧倒的な練習量に裏付けされた自信、これが最終滑走でも力を発揮できた最大の要因でしょう。
これで彼女は1つ殻を破ったかもしれません。
来年、ロシア勢と対等に渡り合う彼女の姿が見たいですね。
そしてまさに急成長と言っていい2位の本郷も見事。
非公認とはいえ190点近い点数が出ているのは、着実にレベルアップしている証拠です。
大舞台での強さは昨年、一昨年の全日本で証明済みでしたが、そこに「経験」という名の自信を得ました。
来年はその「自信」を「確信」に変えていくことができるか、勝負の1年です。
樋口はレベルの高いジュニアの中でも突出していることを改めて見せつけてくれました。
しかも表彰台に上がったにもかかわらず満足していない。
自分に対する厳しさ、そしてあくなき向上心。
やはり見ているところが他の選手と違うような気がします。
そんな彼女なら平昌オリンピックの金メダルは夢ではないと言っていいのではないでしょうか。
そして、各代表は以下の通り。
世界選手権:宮原・本郷・村上
四大陸選手権:宮原・本郷・永井
世界ジュニア:樋口・永井・坂本
世界選手権代表の3人は実績を考えても妥当ですが、永井は四大陸にも期待の選出。
早い段階でシニアの国際舞台が経験できることは彼女にとって大きなプラスとなるはずですから、頑張ってほしいですね。
それにしても世界ジュニアの代表争いのレベルの高さ。
3枠あって6位に入らないと出れないってどういうことですか!
ロシア勢の壁は高いですが、頑張ってまた3枠取ってきてほしいですね。
ということで見どころ満載だった今回の全日本フィギュア。
優勝は落ち着くところに落ち着いたという感じですが、特にジュニア世代に期待を持てる結果となりました。
なにせ羽生以外は宇野に負けてますし、村上佳菜子もジュニア2人に負けています。
下からの突き上げは良いことですが、俺に勝つなんぞ10年早いわ!と思わせるぐらいシニア世代には頑張ってほしいと思います。
主力選手の引退や休養が相次ぎ、世代交代が叫ばれた今シーズンも残り試合が少なくなってきました。
様々な選手の台頭がありましたが、中でも目立ったのは宇野と本郷の活躍でした。
宇野は3Aと4Tをマスターした途端にシニアで戦えるレベルまで急成長を遂げました。
来シーズンからは本格的にシニア参戦することが予想されます。(世界ランクもすでに20位まで上昇)
その足掛かりとして、四大陸選手権では結果がほしいところ。
本郷もGPシリーズデビューの年にGPファイナルに出場するという快挙。
その甲斐あって世界ランキングは18位に急上昇。
四大陸選手権、世界選手権で良い演技をして、来シーズン以降につなげていってほしいところです。
今年も日本人選手の活躍に大いに期待しましょう!
以上、超長くなりましたが全日本フィギュアまとめとします。
ご高覧いただきありがとうございました。