いろいろな試算を少し本格的にやってみる。

気の向くまま、いろいろな試算をします。(ゆる~くではなくなってきたのでタイトルを変えました) 基本的にスポーツは何でも見ます。競技によっては人並み以上に知識もあります。 少しでも需要があればいいかなと思いますので、批判も含めたご意見・ご感想をお待ちしています。

ジャンプ女子ワールドカップ 総合優勝争い試算

こんばんは、ch191です。

今回は私の大好きなスポーツの一つであるスキージャンプを、その中で女子のワールドカップを取り上げてみたいと思います。

高梨選手の活躍で人気に火がついた女子のジャンプですが、ワールドカップの歴史は浅く、3シーズン前(2011/2012シーズン)からようやく開始され、今が4シーズン目。

それまでは2004/2005シーズンから開始されたコンチネンタルカップ(ワールドカップの1つ格下の大会)が最高位の位置付けでした。

世界選手権は2009年に初めて女子の部が開始され、今年で4回目を迎えます。

つまり、先人たちの努力があって、世界選手権、ワールドカップが開催されるようになり、ついには昨年オリンピックが初めて開催されるようになったのです。

高梨選手が、山田いずみさん(現女子代表コーチ)をはじめとする、先駆者の方々に、常々感謝の言葉を口にしているのも頷けます。

では前置きはこれぐらいにして、本題の総合優勝争いの試算に入りたいと思います。

では早速、第10戦を終えた段階でのポイントランキングを見ていきましょう。

1.イラシュコ        782

2.高梨           673

3.フォークト        622

4.ロゲイユ         463

5.伊藤           326

6.ザイフリーズベルガー   316

7.ピンケルニッヒ      308

8.ブティッツ        302

9.アルトハウス       288

10.イングランド       276

25.勢藤            83

26.岩渕            82

まず簡単にポイントの仕組みをご説明します。

ワールドカップポイントは、各戦上位30位以内に入ると獲得できます。

順位後との獲得ポイントは以下の通り。

1位 100

2位  80

3位  60

4位  50

5位  45

6位  40

7位  36

8位  32

9位  29

10位  26

以下15位まで2ポイントずつ減少、それ以下は1ポイントずつ減少で、30位は1ポイント獲得となります。

今シーズンは試合数が少なく、あと3戦しか残っていません。

つまり、最大でも300ポイントしか獲得できないため、優勝の可能性があるのは上位3人(イラシュコ、高梨、フォークト)だけなのです。

総合優勝に最も近いのは現在首位、オーストリアのイラシュコ。

今季4勝を挙げ、出場9戦中7戦で表彰台に上がるなど、好調を維持しています。

高梨とフォークトの結果次第では、次戦にも総合優勝が決まります。(詳しくは後述)

V字を大きく広げるダイナミックなジャンプが持ち味。

先日のコンチネンタルカップ時代から活躍しており、4年前の世界選手権優勝、昨年のソチオリンピックでも銀メダルを獲得するなど、長く女子ジャンプ界を引っ張ってきた31歳の大ベテラン。

コンチネンタルカップでは総合3連覇があるものの、ワールドカップでは1シーズン目の2位が最高。

初の総合優勝となるでしょうか。

総合2連覇中の高梨は現在2位。

18戦中15戦優勝し、全戦表彰台に上がるなど、圧倒的な強さを見せた昨シーズンとは異なり、今シーズンは苦しい戦いを強いられています。

3勝こそしていますが、3戦で表彰台を逃すなど、昨シーズンの圧倒的な強さは影をひそめています。

これは、高梨の不調だけでなく、女子ジャンプのレベルが全体的に上がってきていることも考慮すべきでしょう。

ただ、まだ総合3連覇の可能性は残されています。(詳しくは後述)

第10戦では7戦ぶりの優勝を果たすなど、復調の兆しもあるだけに、どこまでイラシュコとの差をつめていけるでしょうか。

総合3位、ドイツのフォークトはソチオリンピックの金メダリスト。

171cmと大柄で、力強い踏切が持ち味のパワー型の選手です。

実は昨シーズンまでワールドカップでの勝利はなく、今シーズン第5戦でワールドカップ初優勝を挙げました。

ただ、未勝利ながら昨シーズン総合2位に入っており、今シーズンも優勝2回、2位にも4回入るなど、安定した成績を残しています。

ここ2戦で8位、12位と調子を落としているのが気掛かりですが、総合優勝する可能性はわずかに残されています。

では、具体的な試算に入ります。

まず、次戦でイラシュコが総合優勝を決める可能性を試算します。

条件は、2位以下との差が200ポイント以上になることです。

①イラシュコ優勝(+100ポイント)の場合

高梨22位以下 かつ フォークト3位以下

②イラシュコ2位以下の場合

高梨、フォークトの結果に関わらず持ち越し

つまり、次戦で決まる可能性は極めて低いと言えます。

終戦を残して総合優勝を決める可能性の試算はかなりパターンが多すぎるので割愛しますが、第11戦、第12戦でイラシュコが2連勝、または優勝+2位(順不同)だった場合は自力での総合優勝が決まります。

では、高梨、フォークトの総合優勝の可能性を探ってみます。

これも全て試算するとパターンが多すぎるので、仮定を立てて考えたいと思います。

何かと申しますと、イラシュコの今シーズン最低順位は8位なので、それ以下にはならないという仮定を立てます。

残り3戦全て8位と仮定する(まずあり得ませんが)と96ポイントを加算しますので、最終的に878ポイントになります。

この場合、イラシュコを上回るためには高梨は最低205ポイント、フォークトは最低256ポイント必要になります。

2位3回で240ポイントを獲得できるので、高梨は理論上上回ることができますが、10戦中9戦でこの3人が優勝を分け合っていることを考えると、優勝がなければ事実上逆転は不可能です。(しかも、仮にフォークトが3連勝したら高梨を上回ってしまいます)

では優勝回数別に見ていきましょう。

①高梨が3連勝の場合

高梨は973ポイントまで伸ばしますので、イラシュコは191ポイントが必要になります。

ただ、2位以下になることは確実なので、イラシュコは最大でも240ポイントしか獲得できません。

表彰台を2回逃すと上回れません(2位+4位+4位では180ポイント)し、表彰台を1度でも逃すと2位2回が必須となります(2位+3位+4位では190ポイント)。

また、3位3回でも届きません(3位×3では180ポイント)。

この場合は逆転優勝の可能性が十分あります。

②高梨が2勝の場合

高梨は873ポイント+αになります。優勝できなかった試合(Aとします)の結果でさらに分けてみましょう。

a)2位の場合

高梨は953ポイントとなり、イラシュコは171ポイントが必要になります。

仮にイラシュコがAで優勝なら残り2戦で71ポイント稼げばいいので、まずイラシュコに決まるでしょう。

イラシュコ以外が優勝ならAでイラシュコは3位以下になるので、残り2戦で最低でも111ポイント稼ぐ必要があります。

3位+4位では届かないので、どちらかで2位に入るか、2戦とも3位に入る必要があります。

Aで4位以下ならさらに条件が厳しくなります。(4位なら3位2回でも届かなくなり2位が必須に)

この場合も可能性はあると言えます。

b)3位の場合

高梨は933ポイントとなり、イラシュコは151ポイントが必要になります。

Aでイラシュコが優勝なら残り2戦で51ポイント、2位なら残り2戦で71ポイント稼げばいいので、まずイラシュコで決まりです。

Aでイラシュコが4位以下なら残り2戦で最低でも101ポイント稼ぐ必要があります。

4位+4位では届かないので、最低1回の表彰台が必須です。

が、これはまずイラシュコになるでしょう。

残り3戦でイラシュコが2回表彰台を外すとは考えにくいからです。

ということで、4位以下の場合は試算しません。

③高梨が1勝の場合

残り2戦が2位2回でも933ポイントとなり、②のb)のパターンとほぼ同じです。

したがって、この場合もイラシュコになると考えるのが妥当です。

まとめると、高梨が総合優勝するためには3連勝することがほぼ必須条件です。

本当に人事を尽くして、という状態にしなければ逆転は難しいです。

しかし、諦めるのはまだ早いと思います。

やってくれると信じましょう。

ちなみにフォークトは3連勝でも難しいです。

イラシュコは140ポイントでいいので、高梨の②のb)のパターンより条件が緩いです。(3位+4位+4位でも足ります。)

したがって、実質的にはイラシュコと高梨の争いと見ていいでしょう。

終戦前にまた試算したいと思います。

では4位以下も見ておきましょう。

5位以下は特に拮抗していることが分かるかと思います。

4位のロゲイユは選手層の厚いスロベニア勢の中でエース格に急成長した20歳。

世界ジュニアでは銀メダルの実績があるものの、ワールドカップの表彰台経験はなく、昨年まではスロベニア勢の4番手、5番手という位置付けでした。

しかし、今シーズン開幕戦でいきなり初優勝。

その後も3位に3回入るなど、一気にトップ選手の仲間入りを果たしました。

来シーズン以降も、高梨らのライバルとなってきそうな存在です。

昨シーズン総合3位と躍進した伊藤は今シーズンも総合5位、着実に力をつけています。

今シーズンは表彰台こそないものの、10戦中9戦でトップ10に入るなど、成績が安定しています。

ただ、今シーズンは表彰台のチャンスがありながら2回目で順位を落とすことが多く、2本揃えることが最大の課題と言えるでしょう。

もう高梨とのダブルエースと言っていい存在ですが、もっと上を目指せる選手だと思いますので、昨年よく見られた高梨とのダブル表彰台をまた見せてほしいと思いますね。

以下、ザイフリーズベルガー、ブティッツといった実績十分のベテラン勢も、アルトハウスのような勢いのある若手も、ピンケルニッヒ、イングランドといった今シーズン急成長を遂げた新鋭もいて、入れ替わりが激しいです。

ロシアのエースであるアブバクモワ、ノルウェーの大ベテランのヤー、アメリカの元世界女王ヘンドリクソンなどがトップ10にいないということからも、層の厚さがうかがえます。

また、通年参戦している日本人選手では勢藤が総合25位、岩渕が総合26位につけています。

勢藤は今シーズン第2戦で22位に入り、初のワールドカップポイントを獲得すると、その後は着実にポイントを加算し、第5戦ではトップ10にあと一歩と迫る11位に入るなど、成長著しい17歳です。

高梨と同学年で、同じ中学出身ということで、高梨の活躍に刺激を受けていることは間違いありません。

今後の活躍が期待されます。

岩渕は3年前に負った両膝靱帯断裂という、選手生命を脅かす大けがの影響もあり、残念ながらソチオリンピックの代表には選ばれませんでしたが、昨シーズンも総合31位に入っています。

3シーズン前のワールドカップでは7位に入った実績もあり、もともと高いポテンシャルを持った選手です。

今シーズンも最高12位で、出場全試合でポイントを獲得しています。

まだ21歳と若く、平昌五輪の代表候補の有力な一人であることに間違いありません。

ちなみにオスロで行われる最終戦は、それまでの総合ランキング30位以内の選手のみが出場できますが、このままいけば2人とも出場できますので、頑張ってほしいですね。

さらに今年は2年に1度の世界選手権が行われます。

女子は個人NHと混合団体(女子2名男子2名のチーム戦)の2種目が予定されています。

実は高梨は世界選手権で、個人ではまだ優勝したことがありません。

今年の舞台はスウェーデンのファルン。

昨シーズン、同地で行われたワールドカップでは優勝を飾っています。

悲願の初優勝なるでしょうか。

そして、実はそのとき2位だったのが伊藤。

ダブル表彰台の可能性も大いにあります。

そして、混合団体はおそらく高梨、伊藤、葛西、伊東の最強の布陣で臨むことになるでしょう。

初開催となった前回大会で優勝を飾っており、2連覇を目指します。

伊藤、葛西は師弟関係にあり、どんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみですね。

最大のライバルは総合首位のイラシュコ、6位のザイフリーズベルガーに加え、男子も総合首位のクラフト、5位のハイベックを擁するオーストリア

ちなみに女子では7位にピンケルニッヒ、男子も9位にシュリーレンツァウアーもおり、層の厚さは間違いなくナンバーワンです。

さらに、総合3位のフォークト、9位のアルトハウスに加え、男子も総合4位のフロイント、11位のフライタークを擁するドイツも手強いです。

その他、スロベニアノルウェー辺りも上位に来そうな気配がありますが、優勝争いはやはり日本、オーストリア、ドイツの3カ国になりそうです。(前回大会も上位3カ国はこの順番)

最後の1人まで勝負がもつれそうな気がしますので、楽しみにしましょう。

ということで、残り少なくなったワールドカップ、世界選手権ともに楽しみな女子ジャンプ。

日本勢の活躍に期待しましょう。