いろいろな試算を少し本格的にやってみる。

気の向くまま、いろいろな試算をします。(ゆる~くではなくなってきたのでタイトルを変えました) 基本的にスポーツは何でも見ます。競技によっては人並み以上に知識もあります。 少しでも需要があればいいかなと思いますので、批判も含めたご意見・ご感想をお待ちしています。

世界ジュニアデータまとめ 日本のフィギュア界の未来は明るい!

こんばんは、ch191です。

今回は先日まで行われていた世界ジュニアフィギュアスケート選手権を、データを中心にまとめたいと思います。

ご存じの方も多いかと思いますが、日本勢は男子シングルで宇野が金、山本が銅、女子シングルでは樋口が銅と、3つのメダルを獲得しました。

これは男子で羽生が金、女子で村上が金、ペアで高橋・トラン組が銀を獲得した2010年大会以来、5年ぶり2度目の快挙です。

また、男子に限れば、日本勢のダブル表彰台は史上初の快挙。

日本勢にとっては収穫の多い大会になったと言えるでしょう。

それではまず男子からまとめます。

さっそくですが、結果は以下の通り。(10位までと日本勢、カッコ内はSP+FSの得点、その横の数字はSPとFSの順位)

1 宇野昌磨          日本    232.54(84.87+147.67) SP1  FS2

2 金博洋           中国    229.70(72.85+156.85) SP5  FS1

3 山本草太          日本    215.45(69.99+145.46) SP7  FS3

4 ネイサン・チェン      アメリカ  213.85(69.87+143.98) SP9  FS4

5 アディアン・ピトキーエフ  ロシア   210.71(76.94+133.77) SP2  FS7

6 アレクサンドル・ペトロフ  ロシア   206.23(75.28+130.95) SP3  FS10

7 デニス・ヴァシリエフス   ラトビア  202.73(69.95+132.78) SP8  FS8

8 ダニエル・サモーヒン    イスラエル 202.39(67.00+135.39) SP12 FS5

9 キム・ジンソ        韓国    202.25(74.43+127.82) SP4  FS11

10 アンドリュー・トルガシェフ アメリカ  201.74(67.78+133.96) SP10 FS6

15 佐藤洸彬          日本    176.66(59.94+116.72) SP17 FS14

宇野は日本勢としては羽生以来5年ぶりとなる世界ジュニアチャンピオンに輝きました。

しかし、1つ判断を間違えていれば優勝はできなかった、まさに薄氷の勝利でした。

SPでは最近安定感の増してきた3Aで、ジャッジの半分以上が最高評価を出すという驚異のGOE+2.57をマークし、苦手の3Lzも減点なしに抑え、スピン・ステップでも全てレベル4かつ高い加点を得て、PCSでも7点台を揃えるなど、ジュニアで世界初となるSP80点台をマーク。

2位と8点近くの差をつけ、優勝は盤石かと思われましたが・・・

FSの冒頭4Tがパンクしてしまったのです。

これが3T«の判定なのか、2Tの判定なのか。

①3回転以上のジャンプを2回飛べるのは2種類まで②2回転以上の同一種類のジャンプは3回飛ぶことができない、というルールがあるため、構成に3Aと3Fを2回ずつ入れていることから、3T«判定の場合、最後の3F+3Tを予定通り飛ぶと①に抵触して0点に、2T判定の場合は構成に3A+2Tを入れているため、最後を3F+2Tに変更すると②に抵触して0点になってしまいます。

かといって、コンビネーションにしないと、単独の3Fを繰り返し飛んだことになり、基礎点が70%になってしまいます。

宇野は最初が3T«だと判断し、最後のコンビネーションを3F+2Tに変更しました。

結果、宇野の判断は正しく、優勝をつかみ取りました。

もし0点になっていれば3F+2Tの点数7.76がなかったことになりますから、逆転されていたのです。

単独の3Fにしていた場合でも逆転されていたと思いますので、勝負を分けた判断だったと言えます。

もちろん優勝できたのは、ジャンプのミスを補えるだけのスピンやステップの質の高さ、そして他の追随を許さないPCSの高さがあるからに他なりませんが、ジュニアで最後の大会となる今大会で優勝できたことは、彼にとってこの上ない自信となったはずです。

シニア本格参戦となる来シーズンが待ち遠しいですね。

金博洋はSPで宇野と10点以上の差をつけられながら、FSでは1位のスコアをマークし、宇野に2.84点差まで迫る銀メダルでした。

FSの構成はもうすでに世界最高レベルで、4回転を3本入れた上に、4T+2Tを後半にするなど、コンビネーションを全て後半に持ってくるという、長がつくほどの攻めの構成でした。

結果、着氷の乱れはあったものの、4回転は全て認定され、TESは90.81と、ジュニア初の90点台をマークしました。(JGPファイナル時の宇野は89.92)

ただ、PCSは1位の宇野と10点以上の差があり、スケーティングの面ではまだまだ課題があると言えるでしょう。

金博洋も来シーズンからシニア参戦してくることが予想され、今後も宇野のライバルとなっていく存在になりそうです。

山本は硬かったというSP7位から大逆転で3位銅メダルを獲得です。

JGPファイナルでも銀メダルを獲得しており、大舞台に強いことをさらに印象付けました。

これでまだ15歳だというから驚きです。

SPでは回転不足をとられた3Aを、FSでは初めて2本入れていずれも着氷。

同じく2本入れた3Lzはいずれも!をとられたものの、減点を最小限に抑えました。

その他ジャンプの質の高さもさることながら、スピン・ステップでも全てレベル4で、TESは80点に迫るハイスコアで全体2番目。

4回転を入れない構成としては驚異的な点数といえます。

PCSではTRの5.75というのはいただけませんが、SSは7.36という高いスコア。

来シーズンは4Tにも挑戦するということで、TESの上積みは間違いなく、ジュニア界をリードしていく存在になるでしょう。

今シーズン宇野が成し遂げた、全日本ジュニア、JGPファイナル、世界ジュニアの3冠を、今度は彼にとってもらいたいですね。

ネイサン・チェンもSP9位から大幅なジャンプアップで、山本とわずか1.60の差の4位になりました。

昨年の世界ジュニアでもSP6位から逆転で銅メダルを獲得しており、フリーで強さを見せました。

FSの冒頭は、以前は3Aを2本という構成でしたが、SPでも3Aは転倒しており、4T、4T+2Tに挑んできました。

結果、冒頭はバランスを崩して両手をつき(GOE-3.00)、2本目もオーバーターン(GOE-1.43)になりましたが、ともに4回転としては認定されます。

その後は大きなミスなく滑り切り、TESでは宇野を上回る全体3番目のスコアをマークします。

PCSでも7点前後の点数を揃え、スケーティング面も評価されました。

チェンも山本と同学年の15歳と若いですが、昨シーズンすでにJGPファイナル、世界ジュニアの両方でメダリストとなっています。

4Tと3Aの精度が上がってくると、怖い存在になりそうです。

SP2位と好発進だったピトキーエフは、FSではジャンプのミスが相次ぎ失速、5位に終わりました。

昨シーズン、JGPファイナル、世界ジュニアでともに銀メダルを獲得しており、今シーズンすでにシニアデビューを果たしていましたが、メダルには届きませんでした。

SPでは3Aを後半にするなど、ジャンプでTESを稼ぎましたが、FSでは冒頭の4Tが回転不足となり転倒、続く3A+3Tはきれいに決めたものの、単独の3Aが1Aに抜けてしまう痛恨のミス。

後半でも3連続ジャンプの1本目が2回転になるなど、最後まで波に乗れませんでした。

PCSではSSで7.29と高い評価でしたが、ミスの影響かPEが6.46に留まり、そこまで伸びませんでした。

シニア2シーズン目となる来シーズン、上位争いをするためには、ジャンプはもちろん、取りこぼしのあったスピンやステップも上げていかなくてはならないでしょう。

今シーズンのJGPファイナルで銅メダルを獲得し、今大会でもSP3位につけたペトロフでしたが、FS10位と大失速で、6位に順位を下げてしまいました。

SPではコンビネーションがややこらえた着氷になった以外は素晴らしい出来で、PCSでは宇野に次ぐ2番目の好スコアでしたが、FSでは3Aと3Lzで転倒してしまうなど、ジャンプに精彩を欠きました。

最終滑走だったこと、そして宇野の直後だったことも影響したかもしれません。

スピンやステップでも取りこぼしがあり、PCSも7点台連発だったSPからは下がってしまいました。

彼もまた、山本と同世代であり、これからの選手です。

ピトキーエフとともに、次世代のロシアを引っ張っていく存在になっていきそうですね。

そして、日本勢のもう一人、佐藤はFSで順位を2つあげて15位でした。

全体的にジャンプの精度が今一つでしたが、それでも全日本の得点を上回ってきました。

初めての世界ジュニアで緊張もあったでしょうが、良く頑張ったと言えるのではないでしょうか。

今後の糧にしてもらいたいですね。

この結果、日本は来年の出場枠も最大の3を確保しました。

日本以外で3枠が取れたのはロシアだけですので、簡単にやってのけましたが、すごいことです。

シニアも含め、改めて層の厚さを見せつけた日本男子。

来シーズンも大いに期待しましょう。

さて、今度は女子ですが、こちらも結果から行きましょう。(10位まで、カッコ内はSP+FSの得点、その横の数字はSPとFSの順位)

1 エフゲニア・メドベデワ      ロシア    192.97(68.48+124.49) SP1  FS1

2 セラフィマ・サハノヴィッチ    ロシア    186.15(63.09+123.06) SP2  FS3

3 樋口新葉             日本     185.57(61.27+124.30) SP3  FS2

4 エリザヴェート・トゥルシンバエワ カザフスタン 173.44(55.95+117.49) SP7  FS4

5 マリア・ソツコワ         ロシア    169.04(53.95+115.09) SP10 FS5

6 坂本花織             日本     166.25(58.72+107.53) SP4  FS6

7 永井優香             日本     163.93(56.93+107.00) SP6  FS7

8 カレン・チェン          アメリカ   157.30(51.64+105.66) SP11 FS8

9 チェ・ダビン           韓国     156.38(54.32+102.06) SP9  FS9

10 ディアナ・ニキティナ       ラトビア   148.63(51.22+97.41) SP13 FS10

やはり、といいますか、表彰台の顔触れはJGPファイナルと全く同じになりました。

メドベデワは、今シーズン出場した、ロシア選手権以外の5大会で全て優勝という驚異的な強さでした。

3LzでSP、FSともに若干のミスがあった以外は全く問題なく、JGPファイナルとの2冠を達成しました。

しかも、PB更新のおまけつきです。

ジャンプを片手を上げて飛ぶのは本来難しいはずなんですが、軽々とやってのけます。

SPのジャンプを全て後半、FSも5本後半に持ってくるあたり、自信があるのでしょう。

まだ15歳ですが、すでに完成されている感があります。

これからPCSもまだまだ上がるでしょうから、トータル200点台は時間の問題かもしれませんね。

将来が楽しみでもあり、日本勢にとっては大きなライバルとなるのは間違いなさそうです。

サハノヴィッチは細かいミスはあったものの、演技をまとめて2年連続の銀メダルです。

SPでバランスを崩した3F+3Tを、FSでは完璧に決めてくるあたりはさすが。

PCSもジュニア選手としては非常に高い評価といえます。

メドベデワと共通する課題は、3Lzのエッジエラーでしょうか。

現在世界のトップを走るトゥクタミシェワ、ラジオノワの2人はエッジエラーがまずありません。

ここを克服しないと、層の厚いロシア勢の中では埋もれてしまう可能性も。。。

ただまだ15歳、ジュニアでかなりの実績を積み上げていますし、シニアでも十分通用するのは間違いなさそうです。

樋口は特にFSが会心の出来で、サハノヴィッチにあとわずかに迫る銅メダルでした。

SPでは3F+3Tの2本目でややバランスを崩し、!をとられ、いつものスピード感がなく、PCSもやや抑えられたが、スピン・ステップで全てレベル4を取ってカバーし、PBをマーク。

FSでは3FをGOE+1.20という素晴らしい出来で決めるなど、4つのジャンプで1点以上の大きな加点を得ました。

スピンも全てレベル4を獲得し、合計9.79の加点を得て、TESは驚異の69.50。

これはシニアでも世界トップレベルのスコアと言えます。(欧州選手権で優勝したトゥクタミシェワのFSのTESは73.15ですが、ジュニアではコレオシークエンスが入っていないため、3点前後の上積みが見込める)

PCSも7点台を2項目でマークして、SPから大幅に上げ、FSのPBを大幅に更新する124.30をマークしました。

これは優勝したメドベデワとわずか0.19しか差がありません。

合計185.57は、今シーズン日本人選手が公認大会でマークした最高得点。

その上、ここに3Aと、将来的には4Tを入れようというのだから末恐ろしい14歳です。

もし、彼女にこの2つの武器が備われば、TESでは男子の羽生のように、誰も届かないレベルに行ってしまう可能性があります。

来シーズン、頑張って3Aを習得してほしいですね。

トゥルシンバエワはこれまで目立った実績はない選手でしたが、FSで素晴らしい演技を見せて、SP7位から4位に食い込んできました。

SPではジャンプにやや乱れがあったものの、FSではLzに!がついた以外はほぼ完璧な出来で、スピンでも全てレベル4を獲得するなど、TESを伸ばし、PCSでも6点台半ばを揃えて、PBを大きく更新しました。

体は小さいですが、スピード感があり、スケーティング技術の高さがうかがえます。

なにせ、コーチは羽生と同じオーサーコーチですから納得ですし、期待度の高さも感じます。

カザフスタンと言えば男子のデニス・テンが有名ですが、今後女子では彼女が台頭してくるかもしれません。

ソツコワはFSで挽回したものの、SPの出遅れが響き5位でした。

昨シーズン、JGPファイナルで優勝したものの、世界ジュニアは怪我で出られなかったために、今回が初出場となりましたが、メダルには届きませんでした。

今シーズン、SPは比較的安定していましたが、冒頭の3F+3Tの2本目が回転不足となり転倒、後半の3Lzでも回転不足をとられ、TESが伸びませんでした。

FSでは冒頭の3F+3Tを決めて勢いに乗ると、3Loで手をついた以外は大きなミスなく滑り切り、PBに近い点数をマークしました。

すでに実績豊富ですが、まだ樋口と同世代の14歳です。

演技構成はすでにトップクラスのものを持っているので、これからいかに技の質、そしてPCSを上げていけるかがカギになるでしょう。

坂本はSPで4位と好発進でしたが、FSではジャンプで2つミスが出たことが響いて6位でした。

SPでは3Lzのエッジエラー以外は全て大きな加点がつく素晴らしい演技で、PCSも6点台を揃え、PBを大きく更新しました。

FSでは3つ目の3Loで軸が傾いてしまい転倒、そして後半の3Lzでまたもエッジエラーをとられてしまいました。

スピンやステップでもレベル4が1つだけと、取りこぼしがありました。

それでも、決まったジャンプは加点が大きくつき、PCSもSPに続いて6点台を揃えて、またもPBを大きく更新しました。

彼女の魅力は何と言ってもジャンプの高さ。

ルッツのエッジエラーは来シーズンに向けて是が非でも直したいところですが、表現面でも成長したところを見せてくれました。

樋口と同世代の14歳、これからが非常に楽しみな一人です。

永井は足に痛みを抱えていたようですが、それでも7位に入りました。

SPではコンビネーションの1本目がオーバーターンとなり3T+2Tになりましたが、ほかの要素でカバーして6位につけました。

FSではいきなり3Lz+3Tの予定がパンクして1Lz+2Tになってしまいましたが、次のジャンプを3Lz+3Tにしてしっかりとリカバリー。

この修正能力の高さには本当に驚かされます。

その後は3Fでやはりエッジエラーをとられ、後半の3Sが回転不足になるところはありましたが、決まった要素の加点が大きく、大崩れはしませんでした。

PCSでも4項目で6点台後半と、ミスがありながら高い評価を受けました。

今シーズン大きな飛躍を遂げた永井ですが、来シーズン、さらなる飛躍を遂げるためには、まずはフリップのエッジを直すこと、そして構成の見直しも必要だと思います。

それぞれの要素で質の高いものを持っているので、それを生かすために、後半にコンビネーションを2つ入れるなど、まだまだ伸びしろがあると思います。

来シーズンは真価の問われる1年となりそうです。

カレン・チェンは先日のアメリカ選手権でシニアに混じって3位に入った(しかも四大陸で勝ったエドモンズより上)ことで期待されましたが、ジャンプでミスを連発して8位に終わりました。

決まったジャンプでは高い加点をもらっていたのでもったいなかったです。

SPでコンビネーションが入らず、FSで3連続が入らなかったことが致命傷となりました。

ただ、15歳とまだまだこれからの選手ですから、アメリカ勢ではワグナー、ゴールド、エドモンズに続くことが期待されます。

ということで、女子も来年の出場枠3を確保しました。

男子と同じで、3枠確保は日本とロシアだけでした。

上位3人は今でもシニアで十分通用する点数(四大陸の優勝スコアより上)ですし、ジュニアのレベルは年々上がっているなぁと感じます。

日本勢は3人とも最終グループに入るという、こちらも層の厚さを見せました。

3年後の平昌オリンピック、そしてその次のオリンピックに向け、ジュニア世代が着実に成長していることは、今後に期待が持てます。

シニア世代の選手たちにもいい刺激となるでしょうし、日本チーム全体として、王国ロシアに立ち向かってほしいですね。

この世界ジュニアは、男女ともに、日本勢にとって非常に収穫の多かった大会になったと言えるのではないでしょうか。

次世代の勢力を占う上で、大きな指標となるジュニア最大の大会で日本勢が結果を残したことは、明るい材料であることは間違いありません。

さぁ、残すはシニア最後の大会、世界選手権です。

こちらも、日本勢の活躍に期待しましょう。

ご高覧、ありがとうございました。