NHK杯 データ的な観点を捨てて、感想を。
こんばんは、ch191です。
今回はデータ的観点を捨てて、日本人選手を中心に、演技を見た感想、考えたことを書いていきます。
データでは表せないところが多々あるなぁと感じたからです。
GPファイナルのプレビュー記事はまた後日掲載するつもりです。
では、女子から書いていきたいと思います。
なんといってもまずは宮原選手の見事な演技でしょう。
SP、FSともに最終滑走で、その前に滑った有力選手たちにミスが相次ぎ、プレッシャーがかかる中でしたが、全く感じさせませんでした。
それを可能にしたのは、圧倒的な練習量に裏付けられた自信以外の何物でもないでしょう。
だからこそ、最初の3連続がやや乱れても後のジャンプをしっかり飛びきることができたのだと思います。
若干17歳にして、ベテラン選手のような落ち着きを持っているように感じました。
そして、表現面でも、曲を「演じよう」という気持ちが見ているこちらにも伝わってきました。
彼女の小さな体がいつもより大きく見えたのは気のせいではなかったと思います。
演技後のコメントを聞くと、その真面目な人柄、謙虚さがにじみ出ていますが、その中にも感じる内に秘めた闘争心、そしてあくなき向上心。
彼女から「挑戦者」の気持ちがなくなることはないでしょう。
彼女の挑戦を、これからも応援し続けたいと思います。
次に浅田選手。
マスコミは3位に終わるとかGPシリーズの連勝が止まったとか言っていますが、彼女の演技の何を見てそんなことを言っているのかなと思います。
むしろあの出来で表彰台に登ったことをポジティブにとらえるべきです。
彼女の武器はもはやトリプルアクセルだけではありません。
今回初めて認定されたセカンドループのコンビネーションしかり、質の高いスピンしかり、世界最高の呼び声高いステップしかり、磨かれた高い表現力しかり。
それらがまだうまくかみ合っていないだけなのだと思います。
考えてみれば当たり前のことで、1年のブランクを経て、まだ復帰3戦目。
技術等は休養前に比べて間違いなく上がっていますので、あとは本当の意味での「試合勘」を取り戻すことに尽きると思います。
まだ結果に一喜一憂する時期ではありません。
浅田選手本人のコメントからも、悔しい気持ちは持ちつつ、もっと先を見ているように感じます。
長い目で見てあげることがファンにとっても、マスコミにとっても必要だと思います。
最後に木原選手。
GPシリーズデビュー戦となりましたが、実績のある選手が並ぶ中で、堂々とした演技だったと思います。
知っている方もいるとは思いますが、彼女は「大腿骨頭すべり症」という、選手生命を脅かすような難病を克服し、競技に復帰した、精神的にとても強い選手です。
転倒こそありましたが、大崩れすることなく演じ切ってくれました。
SPの振り付けは宮原選手と同じトム・ディクソン、そしてFSの振り付けはジェフリー・バトルが担当していることを考えると、期待されている選手なのかなと感じます。
まだ18歳と若いですし、村主章枝さんのような息の長い選手になってほしいと思います。
海外勢ではやはり2位に入ったヒックスが印象的でした。
特にジャンプの力強さが際立ちますが、スピンやステップも独創性がありました。
アメリカ勢で、ゴールド、ワグナーのダブルエースに次ぐ存在になれるでしょうか。
そのワグナーはジャンプの不調が響き4位でしたが、昨年も銅メダルを取ったGPファイナルでは立て直してくるのではないでしょうか。
違う意味で衝撃だったのはポゴリラヤ。
どうも調子の波がはっきり出てしまいます。
彼女に必要なのは精神的な強さのような気がします。
では男子に移ります。
羽生選手、やってくれましたね。
しかも自国開催のNHK杯で決めるあたりが、彼の精神面での強さを何より表していると思います。
ジャンプ、スピン、ステップをはじめ、動きの一つ一つが、まさに曲と一体となっていました。
また、全てが一連の流れとして途切れることがありませんでした。
まるで1曲を通して1つの長いステップを踏んでいるようにさえ感じられました。
見ている我々からすると、これを超える演技が果たして可能なのかと思ってしまいますが、彼に不可能はありません。
むしろ、これもまだ序章に過ぎないのかもしれません。
本当の意味での「究極」の演技が完成した時、彼はどこまで行ってしまうのでしょうか。
無良選手は最悪の状態だったスケートアメリカからわずか1か月でよく立て直してきました。
というよりむしろ、良い時の彼に近づいているように感じます。
SP、FSで計3回飛んだ4Tを全て着氷し、代名詞である3Aの力強さが戻りました。
GPファイナルに3人出場という、かつてないほどの層の厚さを見せる日本男子の中で、全日本では「無良、ここにあり!」というところを見せてほしいですね。
そして、田中選手も見事な演技でした。
特にFSでは冒頭の4Sの成功(公式戦初!)から勢いに乗り、2本目の3Aが2Aになった以外はミスなく演じ切りました。
シニアでようやく大きな手ごたえをつかんだ試合になったのではないかと思います。
4Sを2本組み込むこと、将来的にはジュニア時代に成功させていた4Tも組み込むことができれば、トップレベルに駆け上がれる可能性を秘めています。
全日本では台風の目になるかもしれません。
海外勢ではやはりまず2位に入った金博洋。
あの4Lzの成功率は驚異的で、羽生が危機感を抱くのも頷けます。
宇野といい、最近のジュニアのレベルは格段に上がっていますね。
個人的に彼のFSのジャンプ構成で一番すごいと感じるのは、4回転4回よりも、3A以上の大技を6回も組み込めることです。
将来的にはFSで4Lzを2回という構成も考えられますし、楽しみでもあり恐ろしくもあります。
そして、ポゴリラヤと同じような衝撃だったのがコフトン。
2本目の4Sが1Sになってしまったところから完全にリズムが崩れてしまい、飛びすぎ違反まで犯すという散々な出来でした。
もう1段階上のレベルに行くには、まだ時間がかかるかもしれません。
ということで日本勢アベック優勝、さらに男女ともにダブル表彰台という、素晴らしい結果に終わった今年のNHK杯。
改めて、フィギュアスケートの魅力をたっぷりと感じられた3日間でした。
そう感じさせてくれたことに、心からの感謝と敬意を表したいと思います。
選手のみなさん、本当にありがとうございました!
そして、これからも頑張ってください!