GPファイナルの感想(今さら)と羽生選手の可能性を探る
こんばんは、ch191です。
何よりもまず、累計100万PVを達成したことに深く感謝を申し上げたいと思います。
まさかこのブログを始めて1年余りでこんなにも多くの方に見ていただけるとは思ってもいなかったので、フィギュア人気の高まりをうれしく思うとともに、もっと良いものを書けるようにと一層気が引き締まる思いです。
これからもどうぞよろしくお願い致します。
さて、GPファイナル前に展望記事をあげる予定だったのですが、データをまとめたところで終わってしまいました。。。
もはやあまり意味はないですが、せっかく作ったのでGPシリーズのポイント表、ならびにGPファイナリストのシリーズデータ(黄色は6人の中で最高値)をあげておきます。
今年は男女ともレベルの高さが際立ちます。
シリーズ成績で、合計スコアの平均値は男子が全員250点以上(しかも5人が260点以上)、女子も全員190点以上(うち2人は200点以上)という、史上最高レベルの争いでした。
ちなみに昨年のファイナリストは、男子で250点以上が2人(最高はフェルナンデスの254.94)、女子で190点以上が2人(最高はラジオノワの199.70)でしたので、いかに今年の争いが厳しかったかが分かります。
それ故に、GPファイナルの結果はある意味必然だったのかもしれません。
では男子から感想に移りたいと思います。(選手の横の数字は合計、SP、FSの得点)
6位 村上大介 235.49(83.47+152.02)
SPではミスがありながらPBを更新しましたが、FSは素晴らしい演技をしたチャンの後で普段通りにはいかなかったのでしょう。
冒頭2本の4Sが決まらず、波に乗ることができませんでした。
それでもコンビネーションジャンプをしっかり3つ入れてリカバリーするなど、意地を見せてくれました。
この悔しさは全日本で晴らしてもらいましょう。
5位 金博洋 263.45(86.95+176.50)
6本飛んだ4回転のうち、きれいに決まったのはFS後半の2本の4Tだけでした。(それはそれですごいのですが。。。)
3Aでも転倒があり、全体的にジャンプで精彩を欠きました。
FSは昨年のジュニアGPファイナルの時と同じく、素晴らしい演技をした宇野の次だったことも影響したのかもしれません。
それでも260点台に乗せてしまうあたりは驚異的というほかありません。
全てのジャンプが決まった時、そして表現面での成長が見られた時、どのような点数をたたき出すのでしょうか。
4位 パトリック・チャン 263.45(70.61+192.84)
合計得点が金博洋と全くの同点という珍現象が起きましたが、FSのスコアが高かったチャンが上位となりました。
SPではシリーズの2戦同様、ジャンプにミスが出ただけでなく、スピンでもレベル認定されないなどまさしく「最悪」の出来となってしまいましたが、FSでは4Tが2本入らなかったことを除けばほぼ完ぺきな出来で、過去2度のファイナルを制した貫禄を見せてくれました。
FSのステップではジャッジ全員から最高評価を受けるなど、加点合計は羽生に次ぐ19.44。
完璧な演技ができれば彼にもSP100点超え、FS200点超えの可能性がありますので、来年の世界選手権でどこまでパフォーマンスを上げられるか、期待したいところです。
3位 宇野昌磨 276.79(86.47+190.32)
羽生以来のジュニア2冠という実績を引っ提げ、満を持してシニアデビューした今シーズン。
シニアのトップスケーターたちに全く引けを取らず、見事GPシリーズを堂々3位で通過。
そして男子シングルでは初となる、シニア1年目でGPファイナルのメダルを獲得しました。
しかも276.79という、歴代14位のハイスコアで文句なしの銅メダルです。(さらにFSの190.32は歴代12位!)
まさに、記録にも記憶にも残る演技でした。(見終わったときに「すげぇ」しか出てきませんでした…)
それでいてまだ伸びしろがあるところが末恐ろしい。
特筆すべきはFSのPCSで自身初となる9点台を4項目もマークしたことです。
シニア1年目でここまで表現力を評価された選手が過去にいたでしょうか。
憧れと公言する高橋大輔氏と同じように、”魅せる”スケーターとして成長していく姿を楽しみにしていきたいと思います。
2位 ハビエル・フェルナンデス 292.95(91.52+201.43)
同門の羽生に刺激されたか、FSで質の高い演技を披露し、史上2人目のFS200点台となる201.43(FS歴代3位!)をマークしました。
合計スコアでも歴代5位で、世界王者の名にふさわしい演技だったと思います。
注目すべきは冒頭の4Tでミスがあったにもかかわらず、PCSでチャンを上回ったことです。
まだシーズン半ばですが、すでにSP、FSともに曲を自分のものにしており、それがINの得点にも反映されています。(特にFSでは9人中5人が満点評価)
世界選手権では4Tを1本増やし、FSで4回転4本という構成に挑んでくるでしょうか。
1位 羽生結弦 330.43(110.95+219.48)
中国杯での凄惨な事故をはじめ、苦難の連続を経験した昨シーズン。
ただ、今思えば昨シーズンを経験したからこそ、彼は強くなりました。
そして、誰にも到達できない領域に…
史上最高のPerformanceだったことは間違いありません。(SPで史上初のPE10点満点)
というより言葉では表せないですね。
しかし、これも彼にとってはまだ通過点なのでしょう。
後ほど、その可能性をシミュレーションしてみたいと思います。
では女子に移りましょう。
6位 浅田真央 194.32(69.13+125.19)
体調管理も含めて、まだ試合勘が戻っていなかったようです。
ただ、先述の通り、今年は史上最高レベルの争いです。
これだけのジャンプのミスを許してくれるほど今回の戦いは甘くありませんでした。
この得点は、昨年なら表彰台に上がれるレベルだということはぜひ知っておいてください(昨年3位のワグナーは189.50)
ですので、全く悲観的になる必要はありません。
むしろ復帰してすぐにファイナルに出られたことをプラスに捉えましょう。
前回の記事でも書いたとおり、長い目で見るべきなのです。
個人的には来年の世界選手権で、ある程度の形が見えてくればいいと思っています。
5位 グレイシー・ゴールド 194.79(66.52+128.27)
ケガで直前に欠場を余儀なくされた昨年のファイナル。
心に期するものがあったと思いますが、それがプレッシャーとなってしまったかもしれません。
結果的にはSP冒頭の3Lz+3Tがきれいに決まらなかったことがすべてだったような気がします。
得点源となる3Lzと3Fが、結局1本もクリーンに決まりませんでした。
それでも190点台中盤まで持ってくるのですから、それ以外の要素とPCSで大きく稼いでいる証拠です。
この悔しさをバネに、来年の世界選手権では自身初の表彰台を狙います。
4位 アシュリー・ワグナー 199.81(60.04+139.77)
素晴らしいFSの演技で、演技が終わった時には昨年の再来(SP6位→総合3位)かと思いましたが、表彰台にはわずかに1.32点届きませんでした。
そう考えるとSPの転倒がなければ、いやコンビネーションを3Lo+2Tにしていれば、と思ってしまいましたが、そこを+3Tに挑んできたという攻めの姿勢が、あのFSの素晴らしい演技を生んだと考えることもできます。
課題の回転不足をわずか1つに抑え、PCSは3項目で9点台をマークするなど、FSだけなら歴代10位となるハイスコアでした。
浅田選手同様、24歳と年齢的にはベテランになった今でも進化しています。
そして、衰えるどころかどんどん増しているスケートへの情熱。
来年の世界選手権では初の表彰台へ、期待がかかります。
3位 エレーナ・ラジオノワ 201.13(69.43+131.70)
昨年の銀メダルに続き、2年連続のメダルとなる銅メダルを獲得しました。
順位は一つ下がったとはいえ、得点は昨年より上がっている(198.74⇒201.13)ので、これも今年のレベルの高さを象徴しています。
メダルの決め手となったのはリカバリー力だと思います。
SP、FSとも冒頭の3Lz+3Tが単独ジャンプになりますが、その後のジャンプでしっかりと+3Tのコンビネーションを成功させました。
SP、FSともボーカル入りの曲を採用し、まさに「ラジオノワ劇場」といった感じですが、彼女に合った曲であることに違いはないのでしょう。
厳しい国内選考を勝ち抜き、来年の世界選手権では頂点を狙います。
2位 宮原知子 208.85(68.76+140.09)
念願の初出場となったGPファイナルで、見事銀メダルを獲得しました。
特にFSはすべての要素に加点が付く最高の出来で、歴代9位となる140.09という素晴らしい得点をたたき出しました。
3FでエッジエラーがついたSPでは、出てきた得点にブーイングが起こりました。
それほど彼女はその実力を世界中に認められたのです。
体格的には決して恵まれているとはいえず、もともと才能があったわけでもない。
それでも努力すれば世界2位にだってなれるんだということを証明してくれました。
次の舞台は連覇がかかる全日本。
今の彼女に死角は全く見当たりません。
1位 エフゲーニャ・メドベデワ 222.54(74.58+147.96)
今シーズンの勢いそのままに、頂点まで駆け上がりました。
SP、FSともほぼ完ぺきで、FS、総合ともに歴代3位となるスーパースコアをマークしました。
その要因は演技構成、GOE加点、そしてPCSです。
基礎点が1.1倍となる後半に誰よりも多くのジャンプを組み込んでいることで、基礎点が上がっています。
次に、代名詞ともいえる片手を上げて飛ぶジャンプをはじめ、スピンやステップでも大きな加点を得ています。(加点合計は驚異の+13.26)
そして、それに比例してPCSも上がり、FSでは3項目で9点台をマークしました。
彼女の特徴はその長い手足だと思いますが、その見せ方が実に上手いと感じます。
それだけに、その線の細さが気になる点でもあります。
まだ16歳、今後も安定して成績を残せるかどうかは蓋を開けてみないとわかりません。
来年の欧州選手権、世界選手権で真価が問われます。
ということで、感想よりデータ的な視点がほとんどになってしまいましたが、それだけ記録的な大会だったことは間違いありません。
その中で、日本選手が男女合わせて5人も出場し、3人がメダルを獲得したことは本当に素晴らしいことです。
ジュニアファイナルの結果を見ても、改めて日本勢の層の厚さを感じる大会となりました。
そして、日本勢、海外勢ともファイナルに出られなかった選手の中にも有力な選手はたくさんいますので、来年の世界選手権ではどうなるのか、非常に楽しみです。
ではいよいよ羽生選手の今後を探ってみたいと思います。(今回はFSに的を絞ります)
まず、現在のプログラムにおける理論値を以下の表で確認します。(理論値についてはもう他の方が触れられていますが、この表自体はNHK杯終了時に作っていたんです。。。)
225.79、これが現在のプログラムにおける理論値です。
これを超える理論値を持つプログラムを滑る選手が1人だけいます。
そう、4回転を4本飛ぶ金博洋選手です。
比較のため、金選手の理論値も表にしてみました。
234.60、これは羽生選手を8.81も上回っています。
これこそが、羽生選手が危機感を抱いている最大の要因です。
ではファイナルエキシビションでも成功させた4Loをプログラムに組み込むとどうなるのか。
「4回転4本では足りない」という彼の発言から考えて、4回転×5のプログラムを想定してみると、以下のようになりました。
236.09となり、金選手の理論値を上回りました。
もちろんこれは後半に4回転を3本飛ぶという、相当難しい構成です。
それでも、羽生選手ならこの構成でもこなせる可能性があると思います。
むしろ、これが完成形ではなく、さらに難度の高い構成を思い描いているかもしれません。
いつ4Loを組み込んでくるのか、という楽しみを持ちつつ、今は目前に迫った全日本選手権を楽しみにしたいと思います。