勝負強さと勝利への執念が生んだ劇的な勝利。(全米QFマレー戦感想)
こんばんは、ch191です。
今日は今朝のマレー戦について。
ほぼフルマッチ、眠い目をこすりながら見ていましたので感想を書きます。
※いつもより口調が強めです。データも少し入れつつ。
これほど心地よい寝不足の朝を迎えたことが今までにあっただろうか。
そして、これほどまでに胸が熱くなった試合を今までに見たことがあっただろうか。
錦織がGSという最高峰の舞台でマレーを撃破した。
それも、ツアーファイナルで調子を落としていたマレーに勝ったのではない。
全仏決勝でジョコビッチに敗れて以降、シンシナティ決勝でチリッチに敗れるまで22連勝、目下27試合で26勝1敗という、ジョコビッチをもしのぐ勢いを持っていた絶好調のマレーに勝ったのだから、この価値は計り知れないぐらい大きい。
マレーも、錦織のサーブを8回ブレークすることに成功できたことは想定内だったとは思うが、まさか自分のサーブをそれを上回る9回もブレークされるとは思っていなかっただろう。
錦織は第1セット、第4ゲーム、第6ゲームをブレークされての1-6で落としたが、実はリオ五輪準決勝の時と同じ落とし方だった。
違ったのは第1ゲームで0-40と3つのブレークポイント握れたこと。
リオ五輪の時は試合を通して1度もブレークポイントすら握れなかったことを考えると、「このままで終わるはずがない」と予感させるには十分だった。
第2セット、第5ゲームで先にブレークを許した錦織だったが、続く第6ゲームですぐさまブレークバック。
しかも圧巻のラブゲームブレークだった。
雨による中断もあり、流れが変わったことを確信。
第10ゲームでも30-40とブレークチャンスはすなわちセットポイント。
これを一発で仕留めてセットオールに持ち込む。
第3セットは第1ゲームでいきなりラブゲームブレークを許したものの、第2ゲームでまたもすぐさまブレークバック。
第7ゲームで40-30から3連続失点でブレークを許したものの、続く第8ゲームでマレー40-0から怒涛の5連続ポイントでみたびすぐさまブレークバック。
試合後、「2・3セット目からは自分を信じてプレー出来ていた」と錦織は語っていますが、冷静にプレーが分析できていて、リターンゲームで手ごたえを感じていたからこそ、このような信じられないパフォーマンスができたのだろう。
結局第9ゲームでこのセット3度目のブレークを許してしまい、セットカウント1-2と追い込まれたが、錦織の様子にそこまでの悲壮感は漂っていない。
フルセットに持ち込めばまだわからない、これは私も錦織も思っていたことだろう。
フルセット勝率.787は歴代1位という無類の勝負強さを誇っているからだ。(ちなみにマレーも歴代4位となる.704と勝負強いのだが)
サービスゲームがカギになるだろうと思いながら見始めた第4セット。
第1ゲームでいきなりのラブゲームキープ。
第3ゲームで15-40のダブルブレークポイントのピンチを迎えるも、凌いでキープに成功。
すると流れが一気に錦織に傾き、第4ゲームで15-40とダブルブレークのチャンスをつかむと、一発で決めて1ブレークアップ。
ブレイク直後の第5ゲームをしっかりとキープし、迎えた第6ゲーム。
マレー40-15から追いつき、さらにポイントを重ねてブレークポイント。
1本凌がれるも再びブレークチャンスを掴み、今度は物にして2ブレークアップ。
第7ゲームをラブゲームキープで締めて、勝負はファイナルセットへ。
ファイナルセット第1ゲーム、ストロークウィナーを連発していきなりのブレークチャンス。
これをまたも一発で仕留めて1ブレークアップ。
第2ゲームをしっかりキープして、2-1で迎えた第4ゲーム。
ストロークのミスで0-40とブレークの大ピンチ。
1本は凌いだものの、最後はフォアのミスでブレークの数が並ぶ。
しかし、錦織のプレーは落ちない。
続く第5ゲームで40-15からウィナー3本を含む怒涛の4連続ポイントですぐさまブレークバック。
ブレークされた直後のブレークバックはこれで4度目。
どんだけタフなんだ…
第6ゲームでは0-30とされるも、何とかキープして4-2。
ただ、マレーも簡単には勝たせてくれない。
第7ゲームをマレーがキープし、4-3で迎えた第8ゲーム。
40-0とゲームポイントを迎えながら、そこからまさかの5連続失点でブレークバックを許し4-4。
続く第9ゲームもキープされ、4-5とこのセット初めてリードを奪われる展開に。
絶対に落とせない第10ゲーム。
プレッシャーがかかるこの場面でマレーのミスを引き出し、ラブゲームキープ。
そして第11ゲーム。
30-30からマレーが痛恨のダブルフォルトで錦織にブレークチャンス。
しびれるこの場面で錦織が選択したのはドロップショット。
マレーに追いつかれるも、体を目いっぱい伸ばしたボレーがコート内に落ちる。
苛立ちが隠し切れないマレー。
それでも錦織はなお冷静だった。
最終第12ゲームはファーストポイントをダブルフォルトで落としたものの、冷静にポイントを重ねて迎えたダブルのマッチポイント。
マレーのバックがネットにかかって勝負あり。
ここでも一発で決めきった。
光ったのは錦織のここぞという時の勝負強さだった。
試合を通してのブレークポイントは錦織の13に対しマレーは15。
しかし、ブレークの数は先述の通り錦織が9、マレーは8。
つまり、第1セット第1ゲームを除くとブレークポイントの獲得率は9/10で実に90%という、考えられないような勝負強さを発揮したのだ。
それだけではない。
錦織が行ったチャレンジが、ゲームを左右する重要な場面でことごとく成功していたのだ。
ほんの数センチというようなきわどい判定のところもあったが、冷静に見極めていた。
そして、勝利を手繰り寄せたのはやはり錦織の「絶対に勝つ」という執念だと思う。
マレーを相手に、ブレークされた直後に4回もブレークバックするということができる選手が果たしてどれだけいるだろうか。
その姿に、日本のファンはもちろん、会場のファンも惹きつけられていった。
今大会一番盛り上がった試合といっても過言ではないだろう。
さらに、勝ってもなお一番冷静なのは錦織本人である。
ここで終わりではない、というのを一番よく分かっているのだ。
これが期待せずにはいられるだろうか。
2年前はQFでワウリンカ、SFでジョコビッチに勝ち決勝に進んだ。
今年はSFでワウリンカ、勝てば決勝でおそらくジョコビッチと当たる。
つまり、それぞれ1つ上のラウンドで戦うことになる。
2年前の再現はそれすなわち、GS初制覇を意味する。
一番の山と目されていたマレーに勝ったことでそれも現実味を帯びてきた。
さあ舞台は整った。
簡単な道のりではない。
それでも、錦織圭という男は必ずやってくれると信じている。
長文失礼いたしました。