全米の話題から見えるATPツアーの問題点
こんばんは、そしてお久しぶりです、ch191です。
ここ1か月、繁忙期だったことと、ランキング表のデータが一部飛んでしまうという絶望的なアクシデントがあり、更新できない状態にありました。
ランキングデータは復旧でき次第、再開する予定ですが、今回は今年の全米で話題になっていることを取り上げてみたいと思います。
それはシャラポワの問題です。
すでにplusoneblueさんが取り上げていますが、私は少し違った視点で見ていきたいと思います。
現在146位と、本来は本戦に出るためには予選を勝ち抜かなければならないランキングであるにもかかわらず、WCで本戦に出場した上に、1Rから敗退する4Rまで、すべてセンターコートで試合が組まれたのです。
この問題を掘り下げていくと、別の大きな問題が見えてくるように思えるのです。
シャラポワがドーピング問題で出場停止処分を受けたことは周知の事実です。
ドーピングを肯定する気は一切ありませんが、ルールに則り、処分を受けた上で復帰することに問題はないはずです。
したがって、今回の全米も予選から出場して、それを勝ち抜いた上で本戦に出場するのであれば、問題にはならなかったでしょう。
手順を踏まずに、あっさり出場できてしまったからこそ問題なのです。
WCで出場することに関しては、それを与えた主催者に一番問題がありますが、シャラポワ本人にも問題があると思います。
そんなにGSに出たいのであれば、それこそ“ねだるな、勝ち取れ!”と思うわけです。
ドーピングという過ちを犯してしまった以上、それぐらいの厳しさは、周りも本人も持つべきでしょう。
しかし、センターコートに試合を組んだことに関しては完全に主催者側の問題です。
第2シードのハレプが相手だった1Rはまだしも、ウィンブルドン優勝者である第3シードのムグルッサを差し置いて、ノーシード同士である2Rや3Rもセンターコートに持ってくるのは、明らかに恣意的です。
全米オープンって、そうでもしないと集客できないほどの大会なんだろうか、と思ってOOPを見ていると。。。
そうか、これは女子だけの問題ではないのかも、と思えてきたのです。
シャラポワは初戦が第2シードだったことからも分かるように、ボトムハーフに入りました。
男女とも、QFまではボトム⇒トップの順で1日ごとに試合が行われていきます。
男子のボトムハーフといえば…第2シードのマレーが開幕直前に欠場を表明し、残った有力どころであるサーシャやチリッチ、ツォンガらも早期敗退。
ナダルやフェデラーらがいるトップハーフに比べて明らかに見劣りするとなれば…
この発想には、集客を意識した商業的な側面が露骨に見えます。
ただでさえセンターコートのチケットはべらぼうに高いわけですから、それに見合う価値のある試合が組めないと客を呼べないだろう、という。
だからと言って、1日に5~6試合ほどしかない貴重なセンターコートの枠を1つ潰してしまう理由にはならないでしょう。
何より、ムグルッサのような他の有力選手が物理的な影響を受けます。
センターコートで試合ができるのは名誉なことですが、他のコートにはない利点を見落としてはいけません。
それは「唯一屋根がついていること」です。
今大会も2日目に雨が降って、ほとんどの試合が延期になりました。
しかし、センターコートでの試合は6試合とも予定通り消化されました。
つまり、センターコートなら開始時刻が遅くなることはあっても、次の日に延期になることはありません。
そのこと自体が日程的な有利不利を生むのではないかという意見もありますが、強い選手の「特権」であると考えれば、それこそ自分の実力で「勝ち取った」権利であり、納得がいくというものです。
問題は、その権利が与えられるべき選手が他にいたにもかかわらず、「集客」という理由が優先されたことです。
これは「アスリート・ファースト」ならぬ「マネー・ファースト」。
現役選手から文句が出るのも無理はありません。
そもそも、なぜ男子のボトムハーフが「スカスカ」になってしまったのか。
これは単なる組み合わせの問題だけではなく、ATPの商業優先体質が招いた結果であると考えざるを得ないのです。
今年の全米は、Top11のうちマレー、ジョコビッチ、ワウリンカ、錦織、ラオニッチと5人も欠場するという異常事態。
欠場理由はいずれもケガ。
うちラオニッチを除く4人は、すでに今シーズン全休を発表するほど深刻。(ラオニッチもまだわからない)
そしてそのケガの原因は、ツアーの過密スケジュールが主因であることは言うまでもありません。
用具の性能が上がり、より多くのスピンをかけるようになった現代のテニスでは、以前にも増して体にかかる負担が大きくなっています。
にもかかわらず、大会数は変わらず多いまま。
昨年もナダルとフェデラーが長期離脱をするなど兆候は見られていただけに、こうなることを予測していたファンも少なくないはずです。
トップ選手の欠場、それこそが大会側にとって最大の損失であり、集客減に直結することになぜ気が付かないのでしょう。
長期離脱となれば損失はさらに大きくなります。
結果的に収益が下がるようでは、本末転倒も甚だしい。
ファンが一番見たいのは、「コンディションの良い」トップ選手同士の真剣勝負。
それが最も実現する可能性があるのがMandatoryと呼ばれるGSやMSの上位ラウンドです。
しかし、トップコンディションでなければトップ選手といえども早期敗退する可能性が高まりますし、欠場してしまうとその可能性は言うまでもなく0になります。
組織が個人をつぶしてしまうこの現状は、まるでブラック企業のようです。
GSやMSには「強制的」(Mandatory)に出場しなければなりません、たとえそれが「休みなし」(マドリード⇒ローマ、カナダ⇒シンシナティ)であったとしても。
ブラック企業同様、ATPのイメージは間違いなく悪化の一途をたどっています。
どうかお願いですATPさん、もっと選手やファンのことを考えてください。
今のツアーの人気は誰が支えているんですか?
ファンはケガで苦しむトップ選手の姿なんかもう見たくないんです。