平昌オリンピック フィギュアスケート男子シングルSPのレベルの高さを、得点の面から読み解く
日本中がその演技に酔いしれたじゃないでしょうか。
羽生、宇野がやってくれました。
そして、フェルナンデス、金博洋、アリエフもノーミスの素晴らしい演技を見せました。
100点台が4人も出るという、オリンピック史上最高レベルとなった男子シングルSPでしたが、今回は最終グループに残ったトップ6の得点を、理論値と比較することでその凄さを検証したいと思います。
理論値とは、TESは予定通りのジャンプを飛び、スピンステップはレベル4で、GOEが満点だった場合の得点、PCSは全項目10点満点の50点のことです。
1位 羽生結弦 111.68(TES 63.18 PCS 48.50)(理論値115.11)
なんと理論値の97.02%にあたる得点を叩きだしました。
GOEの評価は、全ての要素で+2と+3だけが並ぶという、驚異の完成度を誇る演技となりました。
中でも3Aとステップは満点の評価。
最後のスピンはレベル3になりましたが、それもご愛嬌と言ったところでしょうか。
FSでの本当のライバルは、3年前の自分(GPファイナル、同じ『SEIMEI』で出した219.48)なのかもしれません。
2位 フェルナンデス 107.58(TES 59.79 PCS 47.79)(理論値113.35)
こちらも理論値の94.91%という高い得点を叩きだしました。
ジャンプは3つとも2点以上の加点がつき、アップライトスピン以外の要素では+2と+3の評価がずらりと並びました。
FSのジャンプ構成は、羽生、宇野、金に比べると劣る部分があるため、悲願のメダルに向けてはSP同様、高い完成度で勝負する必要があります。
3位 宇野昌磨 104.17(TES 58.13 PCS 46.04)(理論値116.91)
得点は理論値の89.10%。
TESが60点を超えなかった原因は、ジャンプの加点が少なかった(3つで+3.28)ことと、ステップがレベル3止まり(レベル4に比べて基礎点が0.60、GOE加点上限が0.60下がる)だったこと。
それでも元々の理論値が高いため、上位2人とはジャンプ1つ以内の差につけました。
FSでもここ一番の勝負強さを見せれば、金メダル争いを演じられるはずです。
4位 金博洋 103.32(TES 60.27 PCS 43.05)(理論値116.75)
得点は理論値の88.50%。
最終滑走のプレッシャーをもろともせず、全てのジャンプを成功させ、スピン、ステップでも取りこぼしがありませんでした。
加点幅は上位2人には劣るものの、直前の四大陸で出したPBを3点以上上回り、メダル圏内とわずかの差でFSを迎えることになりました。
大舞台に強い稀代の4回転ジャンパーが、男子シングルとしては中国初のメダルを狙います。
5位 アリエフ 98.98(TES 56.98 PCS 42.00)(理論値116.75)
得点は理論値の84.78%。
冒頭の4Lz+3Tをクリーンに決めて勢いに乗ると、そのままノーミスで演じ切り、この大舞台でPBを7点以上も更新してきました。
同じ構成の金博洋に比べると加点幅が小さく、ステップもレベル3でしたが、シニア1年目としては驚異的な点数を叩きだしました。
FSでも4Lzに挑む構成を見せてくれば、メダル争いに絡む面白い存在となりそうです。
6位 チャン 90.01(TES 45.08 PCS 45.93 減点 -1.00)(理論値108.25)
得点は理論値の83.15%。
苦手とする3Aが回転不足となり、転倒したことが得点に大きく響きました。
それでもPCSは上位3人に次ぐ得点であり、3Aだけで減点も含めると理論値の9.1%にあたる得点を失ったことを考えると、それ以外の要素は完成度が高かったということが言えます。
メダルは上位陣のミスがないと厳しい状況ですが、FSでPB(203.99)を出した2年前の四大陸のような演技ができれば、十分可能性が出てきます。
ということで、得点の面から見ていくと、いかに完成度の高い演技が続いたかということが分かります。
その中でも、羽生の完成度が突出していました。
FSでも200点台が連発するような、高いレベルでのメダル争いを期待したいと思います。
生で見れそうにないのが非常に残念ですが。。。